【Canva導入事例インタビュー】創業120年を超える老舗よーじやが挑む、Canvaを活用した組織リブランディング。「おみやげの店」から「おなじみの店」へ
よーじやグループ
事業所|〒600-8031 京都市下京区寺町四条下る貞安前之町589番地 TM四条寺町ビル7階
https://www.yojiya.co.jp/
1904年(明治37年)創業。京都の花街で舞台化粧道具の行商から始まり、手鏡に映る京女性デザインのあぶらとり紙で全国的な知名度を誇る「よーじや」。
100年以上の歴史を持つ老舗企業はいま、大きな変革の時を迎えています。
掲げたテーマは「みんなが喜ぶ京都にする」。その挑戦の裏側には、全社一丸となってブランドの世界観を共有するための、デザインツール「Canva」の活用がありました。
変革のパートナーとして選ばれたのは、Canvaの導入・定着を支援する「ストリートスマート」。
なぜ伝統企業が新しいSaaSツールを選んだのか、そして現場はどう変わったのか。プロジェクトの核心に迫ります。
<プロフィール>
ゼネラルサブマネージャー 出野 沙優美 氏
CI&クリエイティブ統括部 デザイナー 田尻 有香 氏
コミュニケーション戦略室 SNS担当 主任 加地 遥 氏

■ 売上97%減の衝撃。創業以来の危機が突きつけた現実
── まずは、今回貴社が大規模なリブランディングに踏み切った背景からお聞かせいただけますか?
出野さん:きっかけは約6年前の代表交代、そしてその直後に訪れたコロナ禍でした。それまで弊社の売上は、観光で京都に来られるお客様に大きく依存している構造だったのですが、パンデミックに伴う観光客の減少により、売上が97%減少しました。
── 売上が 97%減少…。企業の存続に関わる深刻な状況だったのですね。
出野さん:はい。店舗はほとんど閉めざるを得ない状況が続きました。ECサイトもありましたが、当時はそこまで大きな柱にはなっていなくて…。「観光客だけではなく、地元・京都の方々に日常的に愛していただけるブランドにならなければいけない」と痛感し、「脱・観光依存」を掲げました。
商品開発スピードの向上や販路の拡大などに取り組み、日々の暮らしで使ってもらえる土台を整えていきました。
── その後、2025年3月に「みんなが喜ぶ京都にする」という理念を掲げてリブランディングをされましたね。
出野さん:そうです。観光客だけではなく、日々の暮らしに欠かせない存在として、地元京都の人々に愛されるブランドへ生まれ変わろうと決意しました。暮らす人も、創る人も、働く人も、訪れる人も、すべての人が喜びを感じられる京都を目指しています。そこで課題になったのが、良くも悪くも強すぎる「あぶらとり紙のよーじや」「京都みやげのよーじや」のイメージでした。 スキンケアや日用雑貨など、日々の暮らしの中で使ってもらうイメージを持ちづらい。そのイメージを変えるためには大掛かりな根本改革が必要だということで、リブランディングに至りました。「もっと日常に馴染む、親しみやすい存在になりたい」。そこで生まれたのが、ロゴマークをデフォルメした新キャラクター「よじこ」です。

▲リブランディングされたコーポレートロゴとキャラクター、ブランドロゴ
── 100年以上の歴史がある中で、ブランドイメージを変えることへの抵抗はなかったのでしょうか?
出野さん:お客様にも愛していただいている認知度の高いロゴマークでしたので、正直、社内でかなり慎重に議論を重ねました。
田尻さん:社内に動揺したスタッフもいたかもしれません。私自身も10年以上あのロゴと共に働いてきましたから愛着もありました。
加地さん:でも、不思議と反対意見は少なかったです。以前から代表が「変わらなければならない」と言い続けていたこと、そしてこれからどう変わっていくのかという道筋が見えていたので、不安よりも「会社が本気で変わろうとしているんだ」という期待感の方が大きかったように思います。
■ 現場の課題:ルール不在によるブランド・トーンの不一致
── 当時、現場のクリエイティブ制作にはどのような課題があったのでしょうか?
加地さん: 最大の課題は、ブランドのトーン&マナー(トンマナ)の統一と管理です。リブランディングに伴い、提案書や報告書など多くのPowerPoint資料を刷新する必要がありましたが、制作フローを各部署の裁量に任せていました。その結果、いざ蓋を開けてみるとバラバラで。改めて全社的にブランドのトンマナを統一することの難しさを痛感しましたね。
出野さん: 制作物や店舗づくりに関する明確な「ブランド管理ルール」が存在していなかったんです。基準がない、いわば「無法地帯」のような状態で制作が進むため、広報やライティング担当者が行うチェック作業の工数も膨れ上がっていました。
田尻さん: 当初「リブランディング」という言葉や概念自体、現場スタッフの中にまだあまり浸透していなかったと思います。
ただ、日々制作物を作る中で「何か違う」「これでいいのだろうか」という漠然とした違和感は、誰もが抱えていました。今回「リブランディング」というキーワードのもとでプロジェクトが進んだことで、「あ、トンマナを統一することが大事なんだ」と、全員の意識が一つに繋がったように感じます。

▲(左より)出野 氏、田尻 氏、加地 氏
■ 導入の決め手:Canva「ブランドキット」が起こした意識改革
── そうした中で導入されたのがCanvaだったのですね。
加地さん:はい。最初は私が個人的に無料版を使っていました。SNSに掲載する画像や動画制作を試したところ「これなら私でも作れる!」と感動して(笑)。 それをSNSチーム内で使い始め、徐々に「これ便利だね」と社内で口コミが広がり、最終的に有償版を会社として導入することになりました。
── Canvaを利用する前はどうやって投稿画像や動画を作成されていたのですか?
加地さん: 以前は、すべて社内のデザイナーに依頼して作ってもらっていました。 Canva導入後は、SNSチームのメンバーだけで完結できるようになりました。デザイナーの手を借りずとも、自分たちの手でスピーディーに制作でき、しかも誰が作っても高いクオリティを担保できる。その「スピード」と「質の再現性」が魅力だと感じています。
── 特に気に入っている有償版の機能を教えてください。
加地さん:やはり一番は「ブランドキット」の存在ですね。Canvaなら、私たちが定義した「よーじやのコーポレートカラー」「指定フォント」「ロゴデータ」「よじこのイラスト画像」をあらかじめ登録し、いつでも呼び出せるようにできます。
実はこの時、登録するブランドキットの名前を、あえて「リブランディング」という名前にしたんです。
── 「リブランディング」という名前のブランドキットですか?
加地さん:はい。リブランディング前に使っていたブランドキットが残っていたので、それと区別するために付けた名前だったのですが、これが結果的によかったです。 「リブランディング」という名前がついていることで、「あ、これを使えばいいんだな」「これが今のよーじやなんだな」と一目でわかる。 大々的に「これを使ってください!」とアナウンスしたわけではないのですが、その名前自体が「今、私たちはリブランディングをしているんだ」というメッセージになり、自然とみんなが新しい素材を使ってくれるようになりました。
── なるほど。ブランドキットの名前そのものが、社内へのメッセージになっていたんですね。
加地さん:そう思います。そのおかげで、デザインの知識がないスタッフでも迷うことなく「正解」の色や素材を使えるようになりましたし、誰が作っても自然と「よーじやのトーン」に仕上がるようになりました。
出野さん: 以前はデザインチェックに明確な承認フローがあったわけではないのですが、こうした経緯もあり、この10月にブランド管理専門の部署を新たに立ち上げました。ようやくガバナンスを効かせ、組織としてブランドを守っていく体制が整い始めたところです。
加地さん:実はつい先日も専務から「なんか最近、社内資料のクオリティがあがったんだけど、どうしたの?」という嬉しい言葉をいただいて。
── まさに、会社全体で変革が起きていることを実感できるエピソードですね。
田尻さん:ブランドキットやブランド管理専門の部署が立ち上がったことで、デザイナーではない社員もデザインを意識するようになりました。
そういった意味でも、Canvaという共通のプラットフォームができたことは大きかったですね。
▲よじこがお出迎えしてくれるエントランス
■ ストリートスマートの伴走支援:「楽しさ」と「規律」のバランス
── Canvaの導入にあたって、ストリートスマートの支援はどのように役立ちましたか?
加地さん:自分たちだけでやっていたら「とりあえず導入して終わり」になっていたかもしれません。特に助かったのが、よく使うデザインの「テンプレート制作」を支援していただいたことです。 最初は私たちもどう作ればいいか手探りだったのですが、土台となるテンプレートを用意していただいたおかげで、現場のスタッフはそこから文字や写真を入れ替えるだけで済み、スムーズに使い始めることができました。
また、以前は個人の裁量で作っていた部分も多かったのですが、他社の事例も踏まえながら、どういうフローで管理すべきか、ガバナンスの部分でも相談に乗っていただき助かりました。

▲よーじやのブランドテンプレート
── 研修についてはいかがでしたか?
加地さん:1回目の勉強会の時に実施した、Canvaの「アイデアボード(ホワイトボード機能)」を使ったワークショップが印象的でした。社員全員で一つのボードに入って付箋を貼ったり、アイデアを出し合ったりしたのですが、社内でこういった研修をするという経験が今までなかったんです。
── ツール導入が、社内のコミュニケーション活性化にも繋がったのですね。
加地さん:はい。それまでは、資料作成といえば孤独な作業でしたが、みんなで一つのものを作り上げる感覚を体験できたのは大きかったです。「Canvaって楽しいんだ」「これなら私にもできそう」という空気感が、あの研修で作られました。

■ 今後の展望:「伝える」意識を全社で高め、お客様と響き合うブランドへ
── 導入から半年以上が経過し、SNS運用や店舗POP、社内資料など幅広く活用されていますが、今後の展望について教えてください。
加地さん:田尻が所属するクリエイティブ部門の業務量がまだ多いので、デザイナーではない社員がもっとCanvaを活用してコンテンツを作れるようになっていけばいいなと思います。
田尻さん:社員全員が「クリエイティブ=お客様に伝える」というデザイナー思考をもっと意識できたらいいなと思います。お客様に伝えるためには、どの色がいいのか、どのロゴがいいのか、など考えて制作できればいいですね。
出野さん:リブランディングを会社が主導で進めても、社員が実践してくれないと浸透していきません。Canvaを導入し、ブランドキットやブランドテンプレートを活用したことで、社員がリブランディングを理解して実践するきっかけになりました。
また今までバラバラだった制作物が統一され、お客様の目に触れるものにも統一感が生まれました。新しいブランドロゴが、長年親しんでいただいたこれまでのロゴ以上に、皆様に深く愛され、親近感を持っていただける存在となるよう、大切に育てていきたいです。

■ 全社員がブランドの担い手に。意識改革が生んだ業務の最適化
── 最後に、Canvaを導入するか悩まれている方へメッセージをお願いします。
加地さん:Canvaは単なる「デザイン作成ツール」ではなく「業務効率化のツール」です。働いてる場所が遠方であってもホワイトボードを活用してアイデアを出し合ったり、今までデザイナーがいる部門でしか制作できなかったコンテンツを他部門が制作できるようになったりと、大きな変化がありました。
田尻さん:やって損はないので、迷っているのなら是非やってみたらいいと思います!笑
── 本日は貴重なお話をありがとうございました。
■インタビュー後記:Canvaが引き起こす社員の意識改革
今回のインタビューを通じて印象的だったのは、Canvaが「デザイン作成ツール」の枠を超え、社員の皆さんの意識を変えるスイッチになっていた、という事実です。
共通したツールがない環境では、ブランドの一貫性を保つことは難しく、それぞれの部署が手探りで動かざるを得ません。しかし、Canvaを導入し「ブランドキット」や「ブランドテンプレート」など共通の「型」ができたことで状況が変わり始めます。
自社ブランドの「正解」が示されることで、まず社員の皆さんの迷いがなくなりました。また興味深かったのは、共有されたテンプレートが他部署の活動を知る機会になっていった点です。隣の部署がどんな資料を作っているのかが見える。その透明性が組織全体のブランド意識を高め、結果として自然な一体感を生み出します。
「自分たちの会社は、お客様に何を伝えたいのか」。 ツールを通じて自然とそこに向き合い、誰もがその世界観を表現できるようになる。そうした環境こそが、結果として自社への誇りや愛着(エンゲージメント)を育むのだと、改めて気づかされた取材でした。