自らの行動力が成長の源。「失敗をエネルギーに」変え、目指すはあと10年で300社の事業創造
働き方や学び方の選択肢を拡げ、社会変革をリードする株式会社ストリートスマートは、これからの社会を牽引していくビジネスパーソンに、さまざまな角度から働き方や生き方を考えてもらうきっかけとなるような情報を発信していきたいと考えています。
鋭くものごとの本質をつかむ心の働き「sixth sense(第6感)」。ストリートスマート代表 松林が、先進的な取り組みをする経営者や著名人と対談し、経営哲学や働き方、企業のDX、ICT教育、起業などの切り口でお話を伺い、経営の軸となっている哲学や内に秘めた本質的な感覚・直感を言語化していきます。
そんな新企画「社長のシックスセンス」第1弾!
初回となる今回は、Team Energy株式会社 代表の中村誠司氏をお招きし、事業創造にかける思いや人材育成についてお話いただきました。
Team Energyグループ代表。1968年4月生まれ、現在54歳。大学卒業後、大手証券会社へ入社。 「顧客が得する思いを感じてもらえる仕事がしたい」と決意して退職。
1993年にコスト削減コンサルティング事業を始め、中央電力の前身であるメリックスを創業し、 2003年に日本で初めてマンションの電力一括受電サービスを開始。
翌年中央電力を設立。 2018年「夢と事業が育ちあう森づくり」「共経営」を進めるべく、Team Energy株式会社を設立、グループ経営に乗り出す。
誰もが社長になれる、Team Energyの仕組み
松林:本日はお忙しいなかお時間をいただき、ありがとうございます。僕が会社を経営していく上で非常に影響を受けている中村さんに企画を受けていただき、感謝しています。
早速ですが、中村さんが現在取り組まれているTeam Energyの事業について教えてください。
中村氏:Team Energyは、集合知で未来をつくる経営者集団です。情熱と成長意欲のある全ての人が、グループ内で事業を起こし、経営にチャレンジすることができます。
経営者が事業を成長させるには、情熱と戦略の両方が必要と言われていますが、どちらもバランス良く持ち合わせた人なんて、経営者の中でもほんの一握りです。
では、そんな一握りの人しか会社を成長させられないのかというと、決してそんなことはありません。やる気と情熱さえあれば、周囲がバックオフィスや戦略面をサポートすることで、みんなが立派な経営者になれます。誰かの「やってみたい」を応援し、成功に導く環境をつくりたいと思っています。
会社設立時には、社長、事業、共走者、資金を組み合わせ、連動させ合うことで事業の可能性を検討し、最適なビジョン・事業内容・経営メンバー・資金で創業します。
社員や顧問が「共走者」となり、登記・経理などのバックオフィス業務から事業戦略・マーケティングなどのフロント業務まで、経営に必要な様々な支援を行い、経営をサポートします。
現在グループ会社は27社になり、業種は、エネルギー、再生可能エネルギー発電事業、ブランドコンサルティング、気候変動コンサルティング、DX支援、エステ、食パン製造、子ども向けサイエンス事業、家庭向けIot機器の導入支援など、多岐にわたります。
▲中村代表(右)と松林(左)
確率は高くないかもしれないけれど、社会にイノベーションを起こす事業を生みたい
松林:社長を支える「共走者」が、社長と一緒に事業を育てていく「共経営」に取り組むTeam Energyの在り方は、先進的でとても面白いです。
「挑戦」への意欲は、ストリートスマートでも非常に大切にしており、「挑戦からスタート」というバリューを掲げています。メンバーが新しいことに挑戦しやすいよう、複数の部署の兼務や、未経験者の採用募集も行っています。挑戦を続けられる環境を更に整えていきたいですね。
Team Energy設立のきっかけは何だったのでしょうか?
中村氏:25歳から会社経営を始めて 電力、マンション、DXといろいろな事業をやってきたのですが、中央電力設立から20年のタイミングで、一企業に出資をしていただいたんです。僕たちにとってはひとつの大きな達成でした。
ただ、出資いただいて、会社の信用力はもちろん大きく成長しましたが、新しいことを始めるのに時間がかかるようになり、リスクのあることへの挑戦が難しくなりました。
中央電力を応援する気持ちで資本を入れていただいたのに、何かを始めることが難しくなる、というジレンマを抱えてしまい、自分がどんどん窮屈になってきたんです。私が望んでいたかたちではあったのですが、いろいろな面で制約がでてきてしまったので、その制約を外すために、新しいフィールドで事業をやっていきたいと思うようになりました。
松林:規模が大きくなりすぎると、創業期のようには新しい取り組みを気軽に始められなくなりますよね。
Team Energyの事業は最初から考えていたのでしょうか?
中村氏:社長をつくりたい、というのは最初から思っていました。
そんなに能力が高いわけではない私でもまわりに支えられて社長をやってこれたので、他にもそんな人がいるだろうなと。社長経験のない人でも、熱い想いを持った人がチャレンジできる土壌をつくりたいと思っていました。
私は社長業は経験だと思っています。毎日いろんなことに対応する必要があるので、経験がものをいいます。
Team Energyの環境を使って、社会に社長経験を持つ人をどんどんつくっていく。そうすると、その中からイノベーションを起こす事業が生まれると思うんです。実際、今グループ会社には億単位の売上をたてている企業が複数ありますし、世の中になかった仕事で利益を出している事業もあります。
▲終始エネルギッシュな中村代表
大切なのは、想いを言葉で言い続けること
中村氏:私は、こだわらないことにこだわっています。Team Energyが扱う事業にも規模にもこだわりはありません。社会にとって意味のある事業かどうかだけが判断軸です。儲かるだけの事業はつくりません。
もちろんリスクは大きいですし、効率なんて超悪いです。でも、誰かがリスクをとってスタートしていかないと、社会に新しい土俵は生まれません。
難しいことに取り組んでいるという自覚はありますが、難しくてもやりたいことを言い続けていたら、今は実現してくれそうな、いろんな人と自然に出会えるようになりました。想いを言い続けることは大事です。
Team Energyは設立から6年でグループ会社が27社になりました。65歳までに、300社立ち上げたいと思っています。
松林:300社! 本当にスケールが大きいですね。事業を任せる社長に必要な能力はありますか? また、事業を続けるのが困難な状態になったときはどのように対処するのでしょうか?
中村氏:社長に必要なことは、嘘をつかない・人のせいにしない・努力を続ける、この3つです。社長に限らず、全てのビジネスマンにとって大切な要素です。とても基本的なことですが、このどれかが欠けていると成長できません。
事業が厳しくなったときにどうするかを決めるのは、共走者です。共走者が事業・組織を短期的・長期的視点で見て客観的にチェックします。私がアドバイスするのは、社長自身の考え方や人としての在り方の部分だけで、事業戦略には口出ししません。
事業が計画通りに進まなかったとき、その社長が、計画と実績の差異をどう感じているのかが重要ですね。他責なのか自責なのか、原因は分析できているのか。
始めるときは挑戦する気持ちが大事ですが、事業が走りだせば求めるのは結果です。Team Energyでは、グループ企業内の取引は禁止しています。甘えに繋がりますからね。
共走者が事業継続は難しいと判断することもあります。
松林:中村さんは事業戦略には入り込んでいないんですね。事業が自分からは離れてしまって見えないことに恐怖はないのでしょうか? 私はとても慎重なので、リスクヘッジのために戦略まで確認してしまうと思います。
中村:ないですね。そこまで見だすと私の手が回りませんし、イノベーションを起こすためには人に任せることが重要だと考えています。
事業に関わる人材が優秀でも、うまく機能していない会社があったり、もちろんチームの戦闘力にムラは出ます。でも、少々の損は覚悟の上です。チャレンジして失敗することが人を育てるんです。失敗したらやり直せばいい、ただそれだけです。
反省はしても挫折じゃない。あえて自らを追い込みエネルギーに
松林:僕は一度起業で挫折を経験してから、会社経営に対する根本的な思想が「会社に関わる全ての人の幸せに繋がる経営」に変わりました。中村さんは挫折を感じたことはありますか?
中村氏:会社がつぶれそうになるとか、ギリギリまで追い込まれたことはあります。でも、そういうのって挫折? いいえ、挫折じゃなくてエネルギーになるんですよ。私は追い込まれたときこそ力を発揮するタイプです。
お金に関しても、事業で利益が出た分は全て投資に回して、常に自分を追い込んで、何も持たない状態でやっています。だから、失敗して追い込まれても、反省はしますが挫折と思ったことはありません。
悩んだとしても、3分たてば立ち直ります。
松林:挫折はエネルギー、すごいですね。事業を創る人、事業を牽引する人はどう育てられるのでしょうか?
中村氏:動いてもらうことが大事です。勉強するだけではなく、行動して結果を出せるかが全てです。
小さいことでもいいので結果を出す訓練をすることが若者にとってはとてもいい経験となります。チャレンジの機会はたくさん用意しておくといいです。
人は動くと熱が出ます。行動すると、その熱で誰かが反応して動いていきます。まずは動いて、何をすべきかは動きながら考えればいいんです。
まずは行動を。やれない理由ではなくやれる理由を探す
松林:これから社会を担う若者に伝えたいことはありますか?
中村氏:先ほども言いましたが、まずは動いてください。行動あるのみです。
最近、「CEOオーディション」というものをやり始めました。年も性別も経歴も問わず、自身に事業構想がなくても社長に立候補できるシステムです。本当にいろいろなバックグラウンドを持つ人が挑戦してくれています。その中には、やりたいことは決まっていないけど“社長”を経験してみたいから挑戦する、という人もいます。やりたいことが明確に決まっていなくてもいいんです。
何かを始めるときは、やれない理由じゃなくて、やれる理由を探してください。人は足が二本あれば走りだせるんです。若い方に言いたいのは、動くと必ず何かが動き出すということです。
先ほど挫折はないというお話をしましたが、毎日失敗の連続です。
失敗続きですが、自分自身が熱を出して動き続ける必要があると思っているから挑戦できます。新しいことに挑戦すると、今まで会ったことのない人に出会えて人生の豊かさにつながります。
自らの原動力こそが成長の源です。
松林:新しい価値を生み出すためには挑戦が必要ですよね。私自身、「できるか、できないか」ではなく「やるか、やらないか」で考え、⾏動し、挑み続けてきました。創業時点でやりたいことがあって社長になったのではなく、社長になろうと思って社長になりました。現在、起業時には思ってもみなかったような事業を手掛けています。
これからもストリートスマートがもっと大きく挑み続けていく会社になるためにアドバイス頂けたら嬉しいです。
中村氏:メンバーがポジティブにどんどん事業をつくって新しいことを始めていけるような組織ができればいいですね。
メンバーには、個々の得意なことを追及して、新しいこと・変えるべきこと・やるべきことを毎日考えてもらってください。
新しいことを考えている人、現状を変えている人はイキイキしています。
松林:ストリートスマートでは、入社した社員にまずストレングスファインダーを受けてもらっているのですが、実は「ポジティブ」が特長のメンバーが本当に多いんです。
社会的価値を提供し続けるためには、企業側に個人の自律と成長を重んじる文化があってこそ、成立するものだと思っているので、より良い成長環境を整えていきます。
本日はありがとうございました。